著者、松井今朝子の生い立ち、考え方、体験を武智鉄二との出会いから死によって失うまでを遺言と形は小説でもありエッセイでもある。
第137回直木賞(平成19年/2007年上期)『吉原手引草』受賞者として、名前は聞き覚えがあったが、著作に触れたことが無かった。
謡曲仲間の先輩推薦で、読む機会を得た。師父が武智鉄二と言うことで、手にするのをためらったが、彼女の個性の魅力にまず惹きつけられた。感性、対応行動が武智鉄二と調和したのだろう。
1970年台の武智の作品は、凡人には少なくとも理解しがたいもので、当時会社の教養人先輩にも、お伺いをたてたが、サッパリだった。
歌舞伎の演出家としての活躍を知り、今日の歌舞伎繁栄の下地を作ったのでは無いだろうか。
死後の評価が低いと、ファンが嘆く理由も理解。難解、前衛、傍若無人などマイナスイメージが残ったのだろう。
自分からは決して読まない本だっただけに、新たな境地を見出した感動モノだ。
松井今朝子のブログも興味深い。