最後通牒(山分け)ゲームとすねる有権者の考え(「科学」12月号2016年より)

時枝正博士は、数学者で人気者と言われています。岩波書店の「科学」Vol86No12(2016年12月号)に標題のゲーム理論を政治の世界に置き換えて説明されています。この理論はマーケティング界でも有効か考えてみたいと思います。
まず、最後通牒ゲーム理論です。イメージ 1
プレイヤー二人(Aさん、Bさん)によってたった1度だけプレイされます。AさんとBさんの前に1万円があります。AさんとBさんはCさんにこの1万円をもらって二人で分けることになったのですが、Cさんは1万円を分けるときの条件を一つつけました。それは1万円をどう分けるかAさんが決めること、BさんはAさんの分け方が不満なら拒否できること。ただし、Bさんが拒否したら、AさんもBさんも1円ももらえません。Aさんはどのような分割提案をすべきでしょうか?
 時枝博士は、分配割合の公平さと不均衡さと合わせて、分配すべき総額との関連を説かれてます。BさんにはAさん対抗に拒否権しか有りません。しかも拒否したら両者が利益無しと言う嫌味(嫌がらせ)が、せいぜいです。50%は欲しい。せめて30%は・・・・。
しかし、1万円で30%なら3000円ですから、Aさんが7000円貰えるジェラシーを払拭すれば、我慢できるでしょう。更に1億円なら1%でも100万円貰えます。AさんがBさんの心理を冷静に見抜けば、99%獲得も現実性が有ります。逆に100円なら、70%で拒否しても70円失うだけですので、嫌がらせ行使が可能です。
 今までのエスタブリッシュメント層を嫌ったトランプ大統領の誕生は、分け前率なのか、絶対額を期待したのか、どちらなのでしょうか。
 次に、マーケティング面ではAさんは中古車屋さんです。伊藤元重博士は「レモンの経済学」と解説されています。つまり、中古車屋さんは100万円で仕入れた車を顧客に500万円でも150万円でも値付けは可能です。つまり、レモンは買って皮を剥いてみなければ分からない、腐っているか食べられるか判断できない、と言う説です。この商取引に信頼性を持ち込めるのは中古車屋さんのブランドだけだというのです。しかし、ここで、最後通牒ゲームが応用を考えてみます。
 政治家は立候補が今回限りで選択されます。次回は次回です。中古車屋さんは都市部なら数多く存在します。顧客が中古車屋さんを渡り歩けばゲームが成り立ちません。そこで、数年に1回しか市場に出ないレアな車が出品されたことにします。顧客はどうしても欲しいのです。中古車屋さんも1回の商取引で売却できなければ、この車を売る権利を失います。条件は、車の値付けは1回だけで、値引き交渉は出来ません。101万円にするか、500万円にするか決断が必要です。顧客も100~500万円相場であることは知っています。分け前ゲームの場合は99~1%の取り分範囲は分かっています。
 この場合、顧客の懐具合と、中古車屋さんの信頼性のどちらが判断基準になるのでしょうか。ここでも10万円の車の場合と比較するとよく分かります。50万円でも11万円でもどちらでも良くなってくるかも知れません。
最後通牒ゲーム理論応用になってるののでしょうか。